この記事の対象:公務員・行政書士・司法書士


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例題

必ず答えを出してから先に進んでください。

例題1
地方財務に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。(行政書士2016)

1 普通地方公共団体は、予算の定めるところにより、地方債を起こすことができるが、起債前に財務大臣の許可を受けなければならない。

2普通地方公共団体は、分担金、使用料、加入金および手数料を設ける場合、条例でこれを定めなければならない。

3 選挙権を有する普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の条例の制定または改廃を請求する権利を有するが、地方税の賦課徴収に関する条例については、その制定または改廃を請求することはできない。

4 市町村が行う国民健康保険は、保険料を徴収する方式のものであっても、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても租税法律主義の趣旨が及ぶと解すべきである。

5 地方税法の法定普通税の規定に反する内容の定めを条例に設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することは、それが法定外普通税に関する条例であっても、地方税法の規定の趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものとして許されない。


ポイント

標準的なテキストは「(国の)財政」があって「地方自治」が続きます。

では地方の財政はどうなの?となりますが、財政のページと地方自治のページにそれぞれ断片的に書いているので分かりにくいんですね。

地方債と地方税について書いておきますので、地方財務の問題で点を取れるようにしましょう。


地方債

地方債とは、地方公共団体が財政上必要とする資金を外部から調達することによって負担する債務で、その履行が一会計年度を超えて行われるものをいいます。地方債は原則として、公営企業(交通、ガス、水道など)の経費や建設事業費の財源を調達する場合等、地方財政法第5条各号に掲げる場合においてのみ発行できることとなっています。

地方公共団体が地方債を発行するときは、原則として、都道府県及び指定都市にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事と協議を行うことが必要とされています。また、総務大臣は同意又は許可をしようとするときは、あらかじめ財務大臣と協議することとされています。

出典 https://www.mof.go.jp/policy/filp/summary/filp_local/tihousaiseidonogaiyou.htm


地方税

地方税は、都道府県や市町村が住民に課税するものです。

地方団体は、その自主性を発揮するために地方税の税目や税率設定について一定の裁量が与えられています。これを「課税自主権」と呼びます。

地方団体は、地方税法上に定められた「法定税」以外に、地方団体の条例により税目を新設できます。これを「法定外税」といいます。法定外税の新設にあたっては、地方税制全体の整合性を保つために、総務大臣による「協議・同意」が必要とされています。

出典 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_24.html

例題では触れられていませんが、地方債と異なり、市町村も総務大臣と協議しますね。


例題の解答

例題1
答えは1。総じてかなり難解です。

2は知らなくてもまあそうかなと推測がつくと思います。

3は難しいです。日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃を請求する権利を有する(地方自治法12条)。

「地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く」と除外されているのが分かりにくいところですが、こういった必要的支出については、取るべきものは取らなければならないので、直接請求を認める意味がないというのが政府見解です。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000087295.pdf

4はよく見かける判例。

5は要注意判例。

法定普通税に関する条例において、地方税法の定める法定普通税についての強行規定の内容を変更することが同法に違反して許されないことはもとより、法定外普通税に関する条例において、同法の定める法定普通税についての強行規定に反する内容の定めを設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することも、これと同様に、同法の規定の趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものとして許されないと解される(神奈川県臨時特例企業税事件 最判平25.3.21)。

地方自治体は法律の範囲内で条例を制定できるので、法定外税の条例をもって地方税法で定められた法定税の趣旨を没却することは許されないということになります。