この記事の対象:公務員・行政書士


こちらは、LEC高松本校申込者にお届けしている「TKM通信」のコンテンツです。

TKM通信 ご案内
https://lec-tkm.blogspot.com/2023/10/lectkm.html


例題

必ず答えを出してから先に進んでください。

例題1
行政法学上の瑕疵ある行政行為に関する記述として,通説に照らして,妥当なのはどれか。(特別区2008)

1 瑕疵の治癒とは,行政庁が意図した行政行為としては違法であるにもかかわらず, 別の行政行為として見れば適法であると考えることができる場合に,これを別の行政 行為であるとしてその効力を維持することをいう。

2 先行処分に瑕疵があり,先行処分と後行処分が相互に関連する場合は,それぞれが 別個の目的を指向し,相互の間に手段目的の関係がないときであっても,先行処分の 違法性は必ず後行処分に承継される。

3 行政行為は,それに明白な瑕疵があれば当然に無効となり国民は正式の取消手続を 経るまでもなく,通常の民事訴訟により直接自己の権利を主張することができる。

4 違法行為の転換とは,行政行為がなされたときには,手続的な要件が欠けていたが, その後の事情の変更又は追完によって要件が充足され,瑕疵が無くなった場合に,そ の行政行為の効力を維持することをいう。

5 取り消しうべき瑕疵を有する行政行為は,正当な権限のある行政庁又は裁判所が取 り消して初めて効力を失うもので,取り消されるまでは,その行政行為の相手方や行 政庁その他の国家機関はこれに拘束される。


例題2
行政行為の瑕疵に関する記述として,通説に照らして,妥当なのはどれか。(特別区2017)

1 違法行為の転換とは,ある行政行為が本来は違法ないし無効であるが,これを別個の 行政行為として見ると,瑕疵がなく適法要件を満たしていると認められる場合に,これ を別個の行政行為として有効なものと扱うことをいう。

2 行政行為の撤回は,行政行為の成立当初は適法であったが,その後に発生した事情の 変化により,将来に向かってその効力を消滅させる行政行為であり,その撤回権は監督 庁のみ有する。

3 行政行為の取消しとは,行政行為が成立当初から違法であった場合に,行政行為を取 り消すことをいい,その効果は遡及し,いかなる授益的行政行為の場合であっても,必 ず行政行為成立時まで遡って効力は失われる。

4 行政行為の瑕疵の治癒とは,行政行為が無効であっても,その後の事情の変化により 欠けていた要件が充足された場合,当該行政行為を行った処分庁が必ず当該処分を取り 消すことによって,その行政行為を適法扱いすることをいう。

5 取り消しうべき瑕疵を有する行政行為は,裁判所によって取り消されることにより効 力を失うものであり,取り消されるまでは,その行政行為の相手方はこれに拘束される が,行政庁その他の国家機関は拘束されない。


ポイント

行政行為の難しいところは、違法な行為になんやかんや理由をつけて現状追認的な扱いをすることだと思います。

例えば公定力。違法な行為も取り消されるまでは有効。

違法行為の転換と瑕疵の治癒は、違法な行為が、単に有効とされることを超えて合法とされてしまうパターンです。


違法行為の転換と瑕疵の治癒の相違


こちらが両者を簡単に比較した表です。

ある行政行為に瑕疵があるため本来は違法であるが、それを別の行政行為としてみると瑕疵がなく適法要件を充たしている場合に、これを別の行政行為として有効なものとして扱うことが違法行為の転換です。同じ行為なのに、Aから見ると違法、A’から見ると適法です

これに対して、行政行為の瑕疵の程度が軽微であり、欠けていた要件が事後的に具備されるに至った場合に、当該行政行為を有効なものとして扱うことが瑕疵の治癒です。Aだけでは軽微ながら違法ですが、aが加わることによって適法となります。

イメージはこれでバッチリだと思います。あとは回りくどい問題文を読み解くだけです!


例題の解答

例題1
1と4は瑕疵の治癒と違法行為の転換を入れ替えている意地悪な問題です。

答えは5。公定力の記述です。


例題2
答えは1です。

4の瑕疵の治癒は、軽微な瑕疵のみを指し、無効ではだめだというのが隠れ論点です。

上の事例でいうと、AとA’は同じ行為ですが、A’はそれ自体適法なので、Aが無効でもかまわないのです(違法行為の転換)。

これに対して、Aにaを付加して瑕疵が治癒するというのは、Aをそのまま使うので、Aの瑕疵が軽微だったらまあいいけど、Aの違法性が大きい(無効)となるとちょっといきすぎかなということです。