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例題
必ず答えを出してから先に進んでください。例題1
Aは、Bに対して金銭債務(以下、「甲債務」という。)を負っていたが、甲債務をCが引き受ける場合(以下、「本件債務引受」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。(行政書士2020)1 本件債務引受について、BとCとの契約によって併存的債務引受とすることができる。
2 本件債務引受について、AとCとの契約によって併存的債務引受とすることができ、この場合においては、BがCに対して承諾をした時に、その効力が生ずる。
3 本件債務引受について、BとCとの契約によって免責的債務引受とすることができ、この場合においては、BがAに対してその契約をした旨を通知した時に、その効力が生ずる。
4 本件債務引受について、AとCが契約をし、BがCに対して承諾することによって、免責的債務引受とすることができる。
5 本件債務引受については、それが免責的債務引受である場合には、Cは、Aに対して当然に求償権を取得する。
Xから
【民法】債務引受け
— うどん県のLEC 資格試験情報局(LEC高松本校) (@LECtakamatsu) November 11, 2023
債権者と引受人との間でする債務引受け契約について
正しいのはどれでしょう
*以下、併存的債務引受けを「併存的」、免責的債務引受を「免責的」と書きます
ポイント
債務引受けは、債務者を交替又は追加するための手法です。旧民法には、債務引受けについて規定がなく、解釈上認められるという微妙な存在だったため、司法書士以外の試験ではややマイナーな存在だったかと思います。
しかし、平成29年改正で明文規定ができたため、今後は出題が増えることも予想され、また過去問が少ないのでとっつきにくい面もあるかと思います。
そこで、債務引受けについて、深入りしすぎることなく簡単にその仕組みを押さえておこうと思います。
併存的債務引受けと免責的債務引受け
債務引受けには、併存的債務引受けと免責的債務引受けがあります。併存的債務引受けは債務者の追加、免責的債務引受けは債務者の交替です。
効果としては、併存的債務引受けは新旧債務者が連帯債務関係となり、免責的債務引受けは新債務者が債務者となり旧債務者は債権債務関係から脱退します。
債権者からみれば、併存的債務引受けは保証人が現れたみたいなもので非常にありがたいものとなります。
旧債務者からみれば、免責的債務引受けは、他の人が債務を引き継いでくれるので非常にありがたいことなのがわかると思います。
契約形態の比較
契約形態 | 旧債務者の意思に反する場合 | |
---|---|---|
併存的債務引受け | 三面契約 (債権者・旧債務者・引受人) | - |
債権者と引受人 | 引受け可能 | |
旧債務者と引受人 (債権者の承諾が必要) | - | |
免責的債務引受け | 三面契約 (債権者・旧債務者・引受人) | - |
債権者と引受人 (旧債務者に対して通知が必要) | 引受け可能 | |
旧債務者と引受人 (債権者の承諾が必要) | - |
深く突っ込むといろいろあると思いますが、併存的債務引受けと免責的債務引受けはカタチ的にはほぼ同じです。
いずれも、三面契約のほか、債権者と引受人、旧債務者と引受人の二面契約でもできます。
違いとしては、債権者と引受人の二面契約において、免責的債務引受けは旧債務者に対して通知が必要という部分です(民472Ⅱ)。
免責的債務引受けは旧債務者にとってありがたすぎる制度ですが、免責をよしとしない債務者もいます。しかし、免責的債務引受けは旧債務者の意思に反しても可能です。
だからこそ? 民法は通知を要するとして、そのような自分で弁済しないと気がすまない旧債務者に対して最低限の配慮をしたものと思われます(ありがた迷惑配慮)。
逆に、併存的債務引受けは、債権者にとってありがたい制度なので旧債務者の意思に反してもできるし、旧債務者に通知すら必要ありません。
発展 債務者が交替・追加する他の制度
契約形態 | 旧債務者の意思に反する場合 | |
---|---|---|
併存的債務引受け | 三面契約 (債権者・旧債務者・引受人) | - |
債権者と引受人 | 引受け可能 | |
旧債務者と引受人 (債権者の承諾が必要) | - | |
免責的債務引受け | 三面契約 (債権者・旧債務者・引受人) | - |
債権者と引受人 (旧債務者に対して通知が必要) | 引受け可能 | |
旧債務者と引受人 (債権者の承諾が必要) | - | |
保証 | 債務者と保証人 | ・事前求償権なし(無委託) ・現存利益のみ |
履行引受け | 引受人と旧債務者 | - |
債務者交替による更改 | 債権者と新債務者 (旧債務者に対して通知が必要) | - |
第三者弁済 | - | 正当利益があれば可 |
類似の制度について簡単にまとめてみました。
保証と第三者弁済はチェックしておくべきだと思います。
Xの解答
正しいのは「免責的は原債務者に対して通知が必要」です
— うどん県のLEC 資格試験情報局(LEC高松本校) (@LECtakamatsu) November 11, 2023
免責的債務引受けは原債務者にとって利益なだけなのに、あえて通知を要求することを「ありがた迷惑配慮」と勝手に呼んでおります🙄
例題の解答
例題1
答えは5です。1~4は、バチバチ今回の内容です。
しかし、今回の内容についてあやふやでも、5は嗅覚を働かせばあやしいと分かるかもしれません。
免責的債務引受けといえば、実質的な債務の免除の効果をもたらすはずなのに、引受人Cが旧債務者Aに求償できたら何のための免責的債務引受けなのかと思いませんか?
免責的債務引受けの引受人が、債務者に対して求償権を取得しないことについては、民法472条の3に規定があります。
最後に、求償について保証との相違です。担保である保証と債務者そのものとなる免責的債務引受けでは、求償の可否・範囲について相違があります。
保証 | 免責的債務引受け | |
---|---|---|
委託あり | ・事前求償権 ・事後求償権 | 事後求償権 |
委託なし | 事後求償権 | 求償権なし |